【第42回】魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

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第21話「ここはどこどこ? ブリキン城!?」Aパート

「オレは海火子うみひこ。ワタルたちがバラバラになっちまった龍神丸を復活させるために逆さ創界山へ行ったと聞いて、オレはすぐに後を追いかけた。まるで水の中のような空間を落ちていくうちに、気が付くと森の中にたどり着いていたんだ。どうやら辺りには人っ子一人いない。とにかく、こんなところでじっとしてても何も始まらねぇ! 待ってろ、ワタル。すぐにオレも、お前らに追いつくからな!」

 オレはもりで茂みをかき分けながら、森の中を歩き続けた。

「ここに来てから、だいぶ時間が経っちまったな……」

 辺りはもう、すっかり暗くなっていた。
 ワタルたちを探すためにも、さっさと人を見つけて情報を集めねぇと。

「おーい! 誰かいないかー!」

 何度となく掛けたオレの声は、またもむなしく森の中に消えていく。

「本当に、ワタルたちもここに来てるんだろうな……? こいつは思ってた以上に   

 薄暗い森の中を見回しながら歩いていると、オレの腹の虫が盛大に鳴いた。
 無理もないぜ。考えてみたら、こっちに来てからまだなにも食べてないからな。

「なんでもいい、どこかに食いもんは……」

    ブゥ~……コココ~……

「ん……?」

 前方の茂みの中から、鳴き声のような音が聞こえて来る。
 オレはもりを構え、慎重に進んでいく。

    ブゥ~……コココ~ッ!

 そーっともりで茂みをかき分けてみると、大きな木の陰で変な生き物が大イビキをかいて眠っていた。

「な、なんだコイツ……?」

 丸々と太ったそいつには羽が生えていて、ブタなのかトリなのかわからない。
 ブタでトリ……ブタ肉でトリ肉? いったい、こいつはどんな味がするんだ?
 面倒だから『ブタドリ』とでも呼ぶことにするが     コイツを見ているだけで、口の中に唾がたまって来る。
 ゴクリとそいつを飲み込んだオレは、ブタドリを起こさないよう、慎重に近づいていく。

『一度狙った獲物は必ずしとめろ』

 これは、オレが父さんから教わったことだ。
 ブタドリに一歩一歩近づきながら、オレは握っていたもりを頭上に構える。

「いくぜ……っ!」

 オレが小声で気合を入れ、ブタドリにもりを突き刺そうとしたその時だった。 

     パキッ!

「んっ!?」

 最後の一歩を踏み込んだ足に、瞬時に縄が絡みつく。

「うわああああああああ~!!!」

 気がつけばオレは、大きな木から伸びた枝に逆さ吊りにされてしまった。

「な、なんだこりゃ? もしかして罠か!?」

 なんてこった。おれは獲物を捕まえようとして、逆に罠にかかっちまったらしい。
 腹がへってたとはいえ、こんなミスをしちまうなんて……

「ブッヒコッコー!」

 ブタドリは驚いた様子で、その場から立ち去って行った。

「待ちやがれ、オレのメシっ!」

 ちくしょう、こんな縄とっとと切って……あれ? 罠にかかった拍子に、銛を手放しちまったみたいだ!
 これじゃ、オレの脚を捕えている縄を外せない。

「く、くそ……っ!」

 体をいくらゆすってみても、頭に血が上るだけだ。

「こんな間抜けな目に合ったなんて、ワタルたちに言えるかよ……」

 力なく逆さ吊りになっていると、遠くでかすかに人の声が聞こえた気がした。
 オレはわらにもすがる思いで叫ぶ。

「誰かいるのかーっ!? いるなら助けてくれー!!!」

 オレの声は、やはり夜の森の中に消えていく。

「……やっぱり、気のせいか」

 諦めかけたその時、重なり合った足音がどんどん近づいてくるのがわかった。

『大丈夫か!!!』

 茂みの奥から、ドレスを着た女と騎士の鎧をまとった男が現れた。

「まぁ、大変……っ!」
「待っていろ、すぐに助ける!」 

 騎士のような男は腰元から剣を引き抜き、勢いよく飛び上がった。

    シャキーン!

 男の鋭いひと振りが、オレの脚を捕えていた縄を切り裂く。

「う、うわぁぁぁ~!」

 解き放たれたオレは、地面にドスンと音を立てて落ちた。

「いててて……」

 半身を起こしたオレのところに、騎士の男とドレスの女が駆け寄って来た。

「大丈夫か?」
「夜の森で、あんな目にあわれるなんて」 

 心配そうなふたりに、オレは笑顔で答えた。

「ああ。アンタらが来てくれて助かったぜ」

 ドレスの女が、罠に使われた縄を手に取りオレに言った。

「まぁ、獣用の罠にかかってしまわれたのね」

 オレは自分でも顔が熱くなっているのが分かった。

    ぐううううう~……

 追い打ちをかけるように、オレの腹が鳴っちまった。くそぉ、情けないったらねぇぜ。
 騎士の男とドレスの女は、それでもオレを優しく見つめていた。

「おなかがすいていたのだな」
「でしたら、こちらを……」 

 ドレスの女が、持っていたかごの中からリンゴとサンドイッチを取り出し、オレに差し出した。

「けどこれ、お前たちの弁当なんじゃ……」
「困ったときは、お互いさまと言うではありませんか。ご遠慮なさらず、どうぞ召し上がって?」
「すまねぇ……恩に着るぜ!」 

 オレは言葉に甘えてリンゴとサンドイッチを受け取り、無我夢中で口の中に放り込んだ。

「うめぇぇぇ~っ!!!」

 久しぶりの食事は、オレの体に染みわたって行くようだ。
 オレはあっという間にぜんぶ食べ終えちまった。

「くぅ~! 生き返ったぜ!」 

 騎士の男が、笑顔でオレに手を差し伸べて来た。

「我が名はオリスカン。キミの名は?」
「オレは海火子だ」 

 オリスカンに引き起こされたオレを見て、ドレスの女も微笑んだ。

「初めまして、海火子さん。私はイズー。ここであったのもなにかの縁、もう遅い時間ですし、今夜はブリキン城にお泊りになってはいかがですか?」
「ブリキン城……!?」 

 オレはイズーとオリスカンに案内され、巨大な城の前までやって来た。
 そこには派手な色の鎧を着た、守衛たちがズラリと整列している。
 ……こいつら、どこかで見たことがあるような? 

「そうだ、ゴーキントンに似てるんだ!」

 オレの言葉に、イズーは首を傾げた。

「ゴーキン……いいえ、あれはブリキントンです」
「ブリキン?」 

 整列したブリキントンたちがオレたちに気づき、鋭い視線をこちらに向けてきた。

(つづく)


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著者:小山 眞


次回8月13日更新予定


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