【第43回】魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

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第21話「ここはどこどこ? ブリキン城!?」Bパート


「おかえりなさいませ、イズー姫っ!」

 ブリキントンは、なぜかイズーに向かって敬礼をした。

「姫……? アンタ、姫様だったのか?」

 戸惑う俺の隣にオリスカンがやって来た。

「その通り。イズー様は、このブリキン城のあるじ『オレ=ドレッド王』の姫君なのです」

 そう言うとオリスカンは、おもむろにブリキントンと同じヘルメットをかぶった。

「てか、なんなんだよ、その恰好は?」
「王の命により、ブリキン城の中ではこれが正装とされているのですよ」

 改めて見ると、確かに城の前にいるブリキントンたちは同じ鎧を着ているただの『人間』だった。

「ずいぶん変わった王様なんだな……」

 ポツリと呟いた俺に、イズー姫は笑顔でヘルメットを差し出してきた。

「海火子様も、どうぞ」
「お、俺もかぶるのかよ……!?」

「ん……えっと……あれ?」

 気が付くと俺は、暗闇の中でひとり佇んでいた。
 俺は確か……イズー姫に案内されて、ブリキン城の一室で過ごしていたはずだ。

「なんにも見えやしないぜ……」

 俺が立ちすくんでいると、前方に光をまとった人間が現れた。
 後ろ姿しか見えないが、俺と同じくらいの背格好で、青と赤の鎧に身を包んだそいつは……間違いない、ワタルだ!
 俺は思わず、その背中に向けて声をかけた。

「ワタル! ずっと探してたんだぞ!」
「…………」

 なぜかワタルは、反応しない。

「どうしたんだよ、聞こえてないのか?」

 俺はとにかく、ワタルに向かって駆け出した。
 ワタルまであと数メートルの所で、俺は透明な壁のようなもの に行く手を阻まれてしまった。
 目の前にワタルの姿が見えているのに、これ以上近づけない。

「くっ、なんなんだよ!」

 俺が何度も壁を叩いても、ワタルは気づきもしない。

「くっ、こんなに近くにいるってのに……!」

 ワタルは俺に背を向けたまま、歩き始めた。

「待てよ! 俺も一緒に行かせてくれ!」

  ワタル!!!』

 俺はベッドの上で大声を上げて目を覚ました。
 ぼんやりとした視界が次第にハッキリとしてくると、ここがブリキン城の一室であることがわかる。

「……ってことは、今のは夢だったのか」

 まさかワタルが出てくるなんて、少し疲れてたのかもな。

   ウオオオオオオオオオーッ!!!!!

 窓の外から突然、地響きのような大歓声が聞こえて来た。

「なんだ……?」

 俺はベッドから降りて、窓の外に見えるバルコニーまで出てみた。
 ひらけた景色の向こうは巨大な円形闘技場になっていて、すり鉢状に広がる観客席にブリキントンの恰好をした人間たちがあふれかえっている。
 これがイズー姫の言ってた、国中の人が集まるってやつなのか?
 ってことは、この中にワタルたちがいる可能性がある。

「どこだ……どこにいるんだ!」

 みんな同じ格好をしてるせいで、見分けがつきやしない。
 俺が観客席を見回していると、野太い男の声が場内に響き渡った。

『親愛なるブリキン城の諸君っ!』

 その一言だけで、観客席に集まった人々の視線が最上段の一点に集まった。
 見ると、そこには黄金の冠をかぶったドレッドヘアーのおっさんが立っていた。

『これより、魔神によるバトルトーナメントを開始する!』

 ドレッドヘアーの男のひと言に、観客たちは大歓声を上げた。

「魔神のバトルトーナメントだと? あのおっさん、いったい何者なんだ……」

 俺が思わず疑問を口にすると、隣の部屋のバルコニーからイズー姫の声が聞こえて来た。

「あれが私の父、オレ=ドレッド王です」

 繋がったバルコニーを伝って来たイズー姫の様子は昨夜と違い、なぜか浮かない顔をしていた。

『このトーナメントに優勝した者には、イズー姫と結婚し、我がブリキン城の主になってもらう!』

 結婚? 最初は俺の聞き間違えだと思った。
 オレ=ドレッド王の言葉は、更に熱を帯びていく。

『この国では力こそ絶対、強い者が正義なのだ! どんなにいやしい者であろうと、罪を犯した者であろうと、もっとも強い者が国を治めるにふさわしい。そして、その強さこそがイズー姫を守ってくれるとワシは信じておる!』

 両手を広げ、オレ=ドレッド王が高々に宣言する。

『戦え、戦士たちよ! 最強となったあかつきには、望みをすべて叶えてやるぞ!!!』

 観客たちはその言葉への賛同を示すように、大歓声あげた。
 俺はイズー姫の不安そうな横顔に向けて声をかける。

「イズー姫、アンタは今の王様の言葉に納得してるのか?」
「父の決めたことが、この国では絶対なのです……」

 苦し気に視線を落とすイズー姫の表情が、すべてを物語っていた。
 オレ=ドレッド王が言った結婚話はきっと、イズー姫の気持ちを無視したものなんだろう。

「そんな変な話があるかよ……」

 闘技場の中央にスーツを着た男がマイクを片手に現れ、観客たちに深々と一礼をした。
 どうやらコイツは、バトルの司会をするようだ。

『それでは、ご紹介いたしますっ!』

 司会の力強い声が、場内に響き渡る。

『ブリキン城で一番の暴れん坊・ララランボーが操る魔神・バトルライガーの登場だあああああああーっ!』

 割れんばかりの大歓声の中、ライオンのような魔神が勢いよく闘技場内に登場し、空に向かって力強く吠えた。
 司会はますますテンションを上げ、対戦相手の入場を促す。

『続いて登場するのは、疾風はやてのごとき魔神・アストロナイトを操る暫定王子、オリスカーーーーンっ!!!』

「オリスカンだって!?」
 
 俺は一瞬、耳を疑った。
 バルコニーから身を乗り出して見ると、闘技場の入口から青と白に彩られた騎士のような魔神が颯爽と姿を現した。

『魔神バトル……スタートッ!』

 司会の合図で、アストロナイトとバトルライガーが同時に駆け出した。
バトルライガーが繰り出した拳を、アストロナイトが盾で受け止める。

「がんばって、オリスカン……!」

 祈るように戦いを見守るイズー姫を見てわかった。

「イズー姫、オリスカンはアンタのために戦ってるんだな」

 イズー姫は俺の言葉に、小さく頷いた。

「はい……」

 イズー姫は激しい攻防を繰り広げる二体の魔神を見つめながら答え続けた。

「父は一度決めたことは、絶対に曲げません……だからオリスカンは命を懸けて、このトーナメントに出ることを決めたのです 」

    ガキ ―――――――――― ン!!!

 アストロナイトの盾を使った強烈な体当たりが決まり、バトルライガーは容赦なく壁に叩きつけられた。
 大歓声に包まれた場内に、司会の声が響き渡る。

『さすがの強さだ、アストロナイトー! このまま暫定王子の地位は、オリスカンが死守するのかああああーっ!!!』

 バトルライガーは倒れたまま、まったく動く気配がない。
 俺はオリスカンの勝利を確信して、イズー姫に声をかけた。

「どうやら決着がついたみたいだな」
「まだです。戦士が魔神の外に出されるまでは、勝利とはなりません」

 イズー姫はまだ、ひとつも油断のない表情をしていた。
 闘技場の中央に立つアストロナイトから、オリスカンの声が聞こえて来る。

『これ以上、相手を痛めつけるのは我が騎士道に反します。大人しく負けを認め、外へ出てきたらどうですか?』

 アストロナイトが歩み寄って手を差し伸べたその時、倒れていたバトルライガーが突然飛びかかり、大きな牙で噛みついた。

『ここでバトルライガーがまさかの反撃! 一転して、オリスカンとアストロナイトの大ピンチだあああああーっ!!!』

 アストロナイトは必死にバトルライガーの牙を剝がそうとするが、食らいついたまま離れない。
 イズー姫と俺は、思わずバルコニーから身を乗り出した。

「オリスカン!」
「まずいぞ、あれは……!」

 観客たちの大歓声が、俺たちの声をかき消してしまう。
 アストロナイトの瞳に灯っていた光が、徐々に薄らいでいく。
 バトルライガーは力なくうなだれた アストロナイトを、猛然と壁に叩きつけた。

『ぐああああああああああーっ!』

 アストロナイトが力なくその場に倒れると、中にいたはずのオリスカンが外へ出されてしまう。
 それを見たイズーはショックのあまり、青ざめてしまう。

「そんな……っ!」

 司会がマイクを構え、バトルの終わりを告げる。

『まさかの大逆転勝利! 勝ったのは、ララランボーとバトルライガー!!!』

 闘技場が大歓声に包まれたその時、アストロナイトは謎の光に包まれ、ゆっくりとその巨体が地面に沈み始めた。
 異変に気が付いたオリスカンは、必死に体を起こす。

「アストロナイトーっ!!!!」

 地面に沈んでいくアストロナイトの後を追いかけ、オリスカンもその光の中に飛び込んだ。
 ふたりはそのまま、姿を消してしまった。
 イズー姫は目の前で起きたことを受け入れることが出来ず、両手で顔を覆った。

「オリスカン……っ!!!」

 あの後、オリスカンは無事に発見されたらしいんだが……なぜか王に逆らった罪で、ブリキン城の地下牢に入れられてしまったらしい。
 イズー姫が詳しい理由を聞いたらしいが、オレ=ドレッド王はなにも答えなかったそうだ。
 結局ワタルを見つけられなかった俺は、ブリキン城の一室で悲しみ続けるイズー姫と一緒にいた。

「ううっ……どうして……どうして、オリスカンが!」

 涙を流すイズー姫を見ているうちに、俺は自分の中に熱い気持ちが湧き起こっているのに気が付いた。
 さっさとワタルたちのところへ行ってやらなきゃならない。それはよくわかってる。
 だけど、このままイズー姫とオリスカンのことを放っておくのは、どうしても出来ない。
 俺はイズー姫のもとにひざまずき、声をかけた。

「なぁ、イズー姫。オレ=ドレッド王は言ってたよな。いちばん強いヤツの望みは、なんでも叶えてくれるって」 
「はい……」

 だったら、ここで俺がやるべきことはただひとつしかねぇ……!

「俺もバトルトーナメントに出場するぜ」
「え……!?」
「安心しな、アンタと結婚するためじゃない。俺が優勝して、アンタとオリスカンを幸せにしてやる!」

 俺の言葉を聞いたイズー姫は涙をこらえ、言った。

「海火子様……ありがとうございますっ!」

 俺は決意と共に立ち上がった。
 オリスカンとイズー姫は、俺にとって命の恩人だ。
 その恩を返さなきゃ、海の男の名がすたるっ!

(つづく)


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著者:小山 眞


次回8月27日更新予定


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