【第44回】魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

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第22話「激闘! 結婚? 風雲ブリキン城!」Aパート


「ぼく、戦部ワタル。獣人たちが暮らすアニマランドという島で、ぼくたちは四つ目の龍神丸の欠片である『龍激丸りゅうげきまる』を復活させることが出来たんだ。次にやってきたのは、誰もいない静かな森の中。今度のぼくは、まるで騎士のような姿になっていた。遠くの方に不思議な形のお城を見つけたぼくたちは、急いで向かうことにしたんだ。ハッキシ言って、今日もおもしろカッコいいぜ!」

 城門をくぐり抜けると、そこは賑やかな城下町だった。

「な、なにこれ……っ!?」

 お城に続くまっすぐな一本道。そこを歩く人たち、露店で物を売ってる人たち、さらにはイヌやネコまで、みんなブリキントンの恰好をしている。
 目の前に広がったとんでもない光景に、虎王とシバラク先生が咄嗟に身構えた。

「ブリキントンだらけじゃねぇか!」
「これだけの数が相手となれば、大事おおごとじゃぞ!」

 ぼくたちの心配をよそに、町の人たちは不思議となにもしてこなかった。
 それどころか、ぼくたちを見て怖がってるみたいだ。
 虎王がその不穏な空気を察して、町の人たちに声をかけた。

「お前たち、ブリキントンじゃないのか?」

 虎王の言葉に、町の人たちは慌てて顔を逸らす。
 この様子を見る限り、どうやらぼくたちを襲う気はなさそうだけど……

「とにかく、誰かに話を聞いてみるよ」

 ぼくは向こうを向いた兵士のようなブリキントンの所へ行き、後ろから声をかけた。

「あの、すみませ~ん!」

 こちらを振り向いた兵士の目が、ぎょっと見開く。

「ちょっと話を聞かせてもらえ   

 と、途中まで言いかけたところで兵士が「ピピーッ!」と笛を鳴らした。
 音を聞きつけた他の兵士たちが一斉に集まり、ぼくたちを取り囲む。

「逃がさんぞ、罪人め!」
「えぇ!? な、なんで……!?」
「黙れ! このブリキン城では、ブリキントンの以外の恰好は許されぬのだ!!!」
「ぶ、ブリキン城!?」

 兵士に捕まったぼくたちは、ブリキン城の地下牢へ連れてこられた。
 虎王、先生、ヒミコがそれぞれ別の牢屋に入れられてしまう。

「この無礼者めっ!」
「拙者たちは怪しい者ではござらん!」
「キャハハハハ! たまやー! ろうやー! さーおだーけやー!」


 ぼくは兵士にお尻を蹴られ、一番奥の牢屋に押し込まれた。

「いててて……なにすんだよぉ!」

 兵士はぼくたちを鋭く睨み、大声で応える。

「お前たちは、ブリキン城の厳格なルールを破ったのだ! 捕まって当然であろう!」
「ぼくたちはまさかそんなルールがあるなんて、知らなかったんだ!」

 ぼくがなんとか理解してもらおうと、兵士に声をかけ続けていたその時      

『ほほぅ、また異国の者か』

 威厳のある声と共に、見るからに立派な鎧とピカピカの王冠をかぶったドレッドヘアーのおじさんと、美しいドレスを着た女の人がやって来た。
 さっきまで強気に振舞っていた兵士は慌てて姿勢を正し、ふたりに向かって敬礼をした。

「こ、これはオレ=ドレッド王! こんなむさくるしいところに、イズー姫までお越しくださるとは……!」

 オレ=ドレッド王に、イズー姫……
 このふたりが、このお城の王様とお姫様なのかな。
 オレ=ドレッド王はぼくたちを見て、ニヤリと微笑んだ。

「なるほど、なかなか強そうな面構えをしておるな」

 偉そうなオレ=ドレッド王に、虎王は堂々と言い返す。

「おい、おっさん! さっさとオレ様たちを解放しろ!」
「解放か……お前は魔神を持っているのか?」
「魔神だと? それがなんだって言うんだ!」

 虎王の問いかけにも、オレ=ドレッド王は余裕の笑みを浮かべた。

「このブリキン城では今、魔神によるバトルトーナメントを開催中なのだ!」

 オレ=ドレッド王はイズー姫の肩を抱き、語り続けた。

「勝った者には我が娘・イズーと結婚し、この城の王子になってもらう」

 イズー姫はその時、なぜか悲しそうにぼくたちの反対側の牢屋を見つめた。
 オレ=ドレッド王はそれに気づいた様子もなく、どんどん熱くなっていく。

「我がブリキン城では、強さこそが正義! いちばん強い者が、すべてを思いのままに出来るのだ!」

 呆気にとられるぼくたちをよそに、ヒミコはまるでおもちゃを見つけた子供のように、オレ=ドレッド王に声をかけた。

「おっさん、頭のそれかっけーな!」
 
 ヒミコははしゃぎながら、オレ=ドレッド王の王冠を指さした。
 それはブリキントンの顔みたいな形をしていて、ぼくにはちょっとヘンテコなデザインに見える。
 オレ=ドレッド王はヒミコに褒められ、上機嫌で応えた。

「そうだろう、そうだろう。ブリキントンは、強くてかっこいいのだ!!!」

 ここまでジッと聞いていた虎王はニッと牙を見せて笑うと、オレ=ドレッド王に声をかけた。

「おい、おっさん。さっき、この城では強いヤツが、すべてを思いのままに出来るって言ったよな?」
「ああ、わしに二言はないぞ!」
「気に入ったぜ! だったら俺がそのバトルトーナメントに優勝して、好き勝手にさせてもらうからな!」
「ガッハッハ! 自信満々というわけか!」

 その隣の牢にいたシバラク先生は……あれ? なんかめちゃくちゃ決め顔になってるんだけど!?

「王子になるということは、ゆくゆくは王様に……? しかも、あんなにかわいい嫁が……!」
「先生、なんか変なこと考えてない……?」
「なっ!? いや、違うぞ! これは、正義のための戦いじゃ!」
「ほんとかなぁ~?」

 先生はオレ=ドレッド王に向けて、力強く宣言した。

「拙者もバトルトーナメントに参加いたす!」

 オレ=ドレッド王はうれしそうに頷き、兵士に向かって指示を出した。

「よし、この2名を檻から出してやれ!」
「はっ!」

    ガチャン!!!

 牢屋から出た先生と虎王は、自信に満ちた表情でぼくを見た。

「案ずるな、ワタル。拙者たちに、任せておけ!」
「オレ様が勝って、お前とヒミコを自由にしてやるからな!」
「うん。ふたりとも、がんばってね……!」

 先生と虎王は、オレ=ドレッド王たちと一緒に階段を昇っていく。
 途中でオレ=ドレッド王が振り返り、なぜか地下牢にとどまっていたイズー姫に声をかけた。

「何をしておる。行くぞ、イズー」
「は、はい……っ!」

 ふたりが出て行って地下牢の扉が閉まる直前、ぼくの反対側に見えていた牢屋の奥から、騎士のような男の人が姿を現した。

「イズー姫……っ!」

 ぼくたち以外にも、捕まってた人がいたのか……

「あなたは?」
「我が名は、オリスカン。この城の騎士です」
「この城の……? なのに、なんで牢屋なんかに……」
「私は、正義のための行動をしただけなのです……!」

 オリスカンはまっすぐにぼくを見て、語り始めた。

「私は長年、オレ=ドレッド王に仕えてまいりました。今回も王の命に従い、バトルトーナメントに出場したのですが……そこで敗北し、大事な魔神・アストロナイトが闘技場の地下に吸い込まれてしまったのです!」

 ぼくはオリスカンのあまりにも真剣な様子に、思わず息を飲んだ。

「私が慌てて後を追いかけてみると、アストロナイトは闘技場の地下で溶かされてしまいました……!」

 僅かに瞳を潤ませたオリスカンを見て、ぼくは胸が痛かった。

「目の前で、自分の魔神が……」

 オリスカンは言葉を詰まらせながらも、話を続けた。

「この城には、なにか大きな秘密がある……そう思った私は、ドレッド王に直接話を伺いに参ったのです。すると王はなぜか激怒され、私をこの地下牢へ閉じ込めてしまわれたのです」

 話を聞いただけで、牢屋に閉じ込めるなんて……

「やっぱりドレッド王は、なにか隠しごとをしてるんじゃ?」
「ここから出ることさえできれば、調べられるのですが……」

 うつむくオリスカンの横から、ヒミコがぴょこんと顔を出した。

「んじゃ、出ちゃいましょーっ!」
「えっ! ヒミコ!?」

 隣の牢屋に入っていたはずのヒミコが、いつの間にかオリスカンと同じ牢屋に入っていた。
 驚いたのも束の間、ヒミコは胸の前で印を結び始める。

「ヒミコミコミコヒミコ……忍法、ところてんの術~っ!!!」

 ヒミコの体は真四角になって……もしかして、ところてんを押し出す棒になっちゃったの!?

「んじゃ、いくよーっ!!!」
「ええっ? な、なにをするつもりですか!」
「そーれいっ!」

 真四角になったヒミコは、戸惑うオリスカン背中をグイグイ押しはじめた。
 オリスカンの全身が牢の鉄格子に押し付けられ、顔だけでなく鎧まで食い込み始めた。

「無理ですっ! 無理ですってばぁ!」

 ヒミコはオリスカンの声を無視し、ぐいぐい押していく。

「ぶにゅぶにゅぶにゅぶにゅぶにゅぶにゅーっ!」
「んがぁ! あぁ! そんなぁ!!!」

 オリスカンの体がぶにゅ~っと、鉄格子の間からところてんのように外へ押し出されていった。

「うわぁ……」

 ぼくはあまりに衝撃の光景を前に言葉を失っていたら、ヒミコが笑顔でこちら見て来た。

「次はワタルの番なのだ!」
「ひええ~っ! イヤだああああああ~!」

「どーも、EXマンです! ワタルくんのお話の途中ですが、どうやら海火子さんにも動きがあったみたいですよ! チェックら、ゴー!」

 闘技場に集まった観客たちの大歓声が、入場口まで聞こえてくる。
 俺は夏鬼丸げきまるに乗り、試合開始の合図を待っていた。

「イズー姫、オリスカン……必ず俺が優勝してやるからな」

 司会者が対戦相手の名前を高らかに叫ぶ。

『それでは、ご紹介いたしましょう! 謎の異国からやって来た、猛虎の如き魔神・邪虎丸を操る少年……虎王だあああああああーっ!!!』

    ウオオオオオオオオオー!

「虎王だと!?」

 まさかの名前に、俺は衝撃を受けた。

(つづく)


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著者:小山 眞


次回9月10日更新予定


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