【第47回】魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

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第23話「輝け、聖龍の力!」Bパート

「ぼくをゴーストンの近くまで連れてって!」

 突然の頼みに、虎王は驚いた声を返した。

『なに言ってんだ、ワタル! そんな危険なこと   
「もしかしたら、アイツを倒せるかもしれない!」 

 言葉を確認するように、邪虎丸はぼくの前まで身を乗り出した。

『なにか考えがあるのか?』
「アイツが再生する時は、必ず右目が光ってたんだ! だから、あの右目を壊せば     
『ヤツの再生を止められるってことか……!』

 ぼくは虎王に思いを伝えるために、しっかりと頷いて答えた。

「先生にヒミコ、それに海火子だっている。みんなの力を合わせれば、きっとうまくいくよ! 力を貸して、虎王!」
『ワタル……!』

 邪虎丸はその場で立ち上がり、力強く身構えた。

『しょうがねぇ。そういうことなら    チェンジ・タイガー!』

 虎王の掛け声で、邪虎丸が猛虎形態に変形した。

『なんだって付き合ってやる! 乗れ、ワタル!』
「ありがとう、虎王!」 

 ぼくを背中に乗せた邪虎丸は、勢いよく空へ飛び上がった。
 中空を舞う邪虎丸を狙い、ゴーストンが右手の銃を掲げる。

    ダダダダダダダダダダ……!!!

 ゴーストンは無数の弾丸を邪虎丸に向けて放ってくる。

『しっかり掴まってろよ!』

 邪虎丸は空中を大きく旋回し、迫り来る弾丸をかわしていく。
 ぼくは猛烈な風に飛ばされないよう、邪虎丸の背中で必死に踏ん張った。

    ダダダダダダダダダダ……!!!

 回避し続ける邪虎丸に苛立ってか、ゴーストンはデタラメに右腕を振り回し、銃を連射し続ける。

『これじゃ、なかなか近づけないぜ……!』

 虎王の言う通り、今のゴーストンにはほとんど隙がない。
 まずはどうにかして、あの攻撃を止めないと   

『野牛シバラク流、バツの字斬り!!!』

 突如轟くシバラク先生の声。戦神丸がゴーストンの機関銃を斬り落とし、弾丸の雨が止んだ。
 けど、放っておいたらまたすぐに再生するはずだ……だから!

「虎王、ひとまず闘技場に降りて!」
『よし……!』 

 邪虎丸が闘技場の中央に着陸すると、戦神丸が駆け寄って来た。

『ワタル! 無事だったようじゃな!』
「先生!」
『油断するでないぞ、こやつはいくら斬ってもキリがないのだ!』 

 今度は上空から、海火子の声がした。

『待たせたな、ワタル!』

 みんなを避難させていた夏鬼丸が戻って来た。

『このデカぶつ、なかなか手ごわそうだな……』
「先生! 海火子! アイツの両足を攻めて、一度完全に動きを止めてほしいんだ!」
『なんじゃと?』
『どういうことだ、ワタル!』
「隙さえ出来れば、ぼくと虎王でゴーストンの懐に飛び込むから!」 

 ぼくの頼みを聞いた先生と海火子は、間髪入れずに頼もしい言葉を返してくれた。

『よかろう! ワタルのことじゃ、なにか策があるに違いない!』
『なにをする気か知らねぇが、やってやるぜ!』

 一緒に戦ってくれるみんなのためにも、必ず成功させないと……
 ぼくは気持ちを奮い立たせるように、思いっきり声を出した。 

「よし、行こう!!!」

 邪虎丸、戦神丸、夏鬼丸が三方向に分かれて飛び上がる。

   ダダダダダダダダダダ……!!! 

 右腕を再生させたゴーストンは、分散したぼくたちを狙ってあっちこっちに銃を撃ち始めた。
 逸れた弾丸が城壁を破壊し、爆音と土煙が上がる。

『参るぞ、海火子!』
『まかせとけ!』 

 戦神丸と夏鬼丸は瓦礫の雨が降る中を素早く駆けていき、ゴーストンの足元近くまでたどり着いた。
 海火子の力強い掛け声が、辺りに響き渡る。 

『いくぞ、シバラク! いち……にの……』
『『さんっ!』』 

 戦神丸と夏鬼丸が駆け抜けざまに鋭い一撃を放ち、ゴーストンの両足を斬り裂いた。

    ゴゴゴゴゴゴゴ……!!!

 両足を失ったゴーストンが轟音と共にゴーストンが仰向けに倒れていく。
 足元に残っていた戦神丸と夏鬼丸に、その巨体が迫る。

『『うわああああああ~!!!』』
『しゅっぴしゅっぱー!!!』

 どこからともなく飛んできた幻神丸の大手裏剣が、倒れるゴーストンと地面の間に縦になって割り入り、夏鬼丸と戦神丸は潰されずに済んだ。

『あっぶねぇ~……!』
『かたじけない、ヒミコ!』 

 戦神丸の視線の先、観客席の上段でヒミコの乗った幻神丸がピースをしている。

『あちしもま~ぜて、なのだ!』

 ぼくは空中を舞う邪虎丸の背中から声をかける。

「ヒミコ、助かったよ!」
『さすがはオレ様のヨメだぜ!』 

 そうこうしてる間に邪虎丸は、仰向けになったまま動けずにいるゴーストンの顔の真上まで移動した。

『今度はオレ様たちの番だ! いけ、ワタル!』
「よーし!」 

 七魂の剣を引き抜き、邪虎丸の背中から覚悟を決めて飛び降りた。
 激しい風圧の中で真下を見ると、ゴーストンの右目が光を放った。
 先生たちが斬った足が、みるみる再生し始める。

「間に合え……っ!」

 ぼくはゴーストンの顔面に迫っていきながら、その右目に鋭く尖った剣先を向ける。

「そこだあああああー!!!」 

 落下の勢いを乗せ、ゴーストンの右目に七魂の剣を突き立てた。
 ゴーストンの右目に亀裂が走り、その隙間から猛烈な光が放たれた。 

「くぅ……!」

 同時に起こった衝撃波に、ぼくは吹き飛ばされた。

「うわあああああーっ!」 

 空中に放り上げられたぼくは、真っ逆さまに地面へ落下していく。
 まずい……このままじゃ! 

    ピカ ――――――――― ン!!!

 ぼくは空中で紫色の光に包まれ、周囲の景色が動きを止めた。
 龍神丸の頼もしい声が、ぼくの心に響き渡る。

「ワタル……ワタルよ……」
「龍神丸……っ!」
「ひとりでは困難なことがあっても、仲間の力を束ね、勇気と共に立ち向かう……それこそが、救世主の心……」 

 龍神丸の残した言葉に、ぼくの胸の中は燃えるように熱くなった。

「お前が求めるなら、呼ぶがいい。神部七龍神がひとり、紫龍むらさきりゅうの力を借りたその名は   

 龍神丸の欠片のひとつである新たな魔神の名が、自然とぼくの口を突いて出る。

「せい……りゅう……まる……」

 ぼくは七魂の剣を天に掲げ、想いを込めて叫ぶ。

「聖龍丸           っ!!!」

 七魂の剣先から、紫色に輝く光の龍が現れた。
 光の龍は周囲に雄叫びを轟かせながら飛び上がると、空に巨大な円を描いた。
 円の内側が激しく輝き、その中心から騎士のようにかぶとで顔を覆った魔神がその勇ましい姿を現し始める。
 紫色の光を放ち、腰元には黄金に輝く大きな『聖龍剣』を備える頼もしい魔神……これが聖龍丸なんだ!
 ぼくは大きく両手を広げ、空中を漂う聖龍丸の中に吸い込まれていった。
 真っ暗闇の中、落ちていく先には紫龍の姿が見える。
 ぼくは騎士の姿からいつもの救世主姿に戻り、紫龍の頭に着地した。
 目の前に見える二本の角をしっかりと掴み、聖龍丸と心をひとつにする。

「よし……!」

 雄々しく剣を構えた聖龍丸に、海火子が鬼気迫る声で呼びかけた。

『気をつけろ、ワタル!』

 ゴーストンが、右腕の銃口をこちらに向けていた。

「聖龍丸!」

 ぼくの声を受けた聖龍丸が剣を払い上げ、一瞬でゴーストンの右腕を斬り落とす。

「どうだ……!」

   オォォォォォォォォーン……!!!      

 ゴーストンが不気味な悲鳴を上げた。
 どうやら、ゴーストンの右腕は再生する気配がない。
 歓喜する虎王の声が、ぼくの耳まで届く。 

『やったな、ワタル! お前の作戦通りだ!』 

 先生、海火子、ヒミコの言葉が、更にぼくの背中を押す。 

『再生せぬとわかれば、こっちのものじゃ!』
『やっちまえ、ワタル!』
『いっちゃえ! いっちゃえ~っ!』
「よーし……! 変化チェンジ・聖龍!」 

 空に飛び上がった聖龍丸が、まるで龍のような姿の『聖龍飛翔形態』に変形し、猛スピードでゴーストンに向かう。

「いっけえええええ ――――――!!!」

 全身に紫色のオーラを纏った聖龍丸が、凄まじい勢いで体当たりし、ゴーストンの胴体を突き破った。

   オォォォォォォォォーン……

 ゴーストンは腹部に大きな穴が開いたまま、その場に立ち尽くしている。

「一気に決めるぞ、聖龍丸!」

 ぼくはすかさず、聖龍丸を元の魔神形態に戻した。

「必殺……」

 ぼくの持つ七魂の剣が、みるみる聖龍剣に変化する。

 聖龍丸は腰元から聖龍剣を引き抜き、頭上に掲げた。

「聖龍剣 ―――――――っ!!!」

 聖龍剣から放たれたまばゆい光が、天まで立ち昇った。
 聖龍丸がそれを力強く振り下ろすと、ゴーストンの巨体に目が眩むほどの強烈な閃光が走る。
 その光は四方に広がり、ゴーストンの巨体にみるみる亀裂が走っていく。

    ドカ―――――――――ンッ!!!!!

 ゴーストンは大爆発を起こし、その爆炎が上空を紅く染めた。

 戦いの後、ぼくたちはブリキン城の最上階にあるオレ=ドレッド王の部屋の前まで案内された。
 中には、オレ=ドレッド王、イズー姫、オリスカンの三人が待っていた。
 オレ=ドレッド王はぼくたちの姿を見ると、玉座から立ち上がった。 

「キミたちがいなければ、このブリキン城はどうなっていたかわからん。どうかこの国を代表し、心からの感謝を伝えさせてくれ。そして……」

 ぼくたちに向け、オレ=ドレッド王が深々と頭を下げた。

「ワシの過ちを謝らせてほしい。本当にすまなかった」
「もういいんですよ、ドレッド王。とにかく、みんなが無事でよかったです」 

 ぼくの言葉を聞くと、オレ=ドレッド王は頭を上げて微笑んだ。

「制御出来ない強いだけの力は、ただの暴力……それがよくわかったよ」

 オレ=ドレッド王は、オリスカンとイズー姫を見つめた。
 その顔は以前とは違い、穏やかで優しいものだ。 

「今後は正しく力を使える者に、この国を治めてもらおうと思う」

 オリスカンとイズー姫は、オレ=ドレッド王にしっかりと頷いた。
 これできっと、この国はもう大丈夫だ。
 海火子はイズー姫とオリスカンの所に歩み寄り、嬉しそうに言った。

「よかったな。ふたりも無事に結婚できそうじゃねぇか」
「ありがとうございます……これもすべて、海火子様たちのおかげです!」
「これからはアナタたちのように、互いに手を取り助け合って、よい国づくりをしていこうと思います!」
「ああ、オリスカンたちならきっと出来る。がんばれよ!」 

 海火子、イズー姫、オリスカンは嬉しそうに微笑み合った。
 どうやらこれで、一件落着みたいだ。

「おお、そうじゃ!」 

 オレ=ドレッド王が笑顔で手を挙げ、兵士を近くに呼んだ。

「そなたたちに、ブリキントンの勲章を授けよう!」

 ブリキントンの鎧を着たヒミコは、それを聞いて大はしゃぎ。

「やったー! やったのだー! ブリキントンは、カッコいいのだ!」
「ハッハッハ! ではまず、そなたからじゃな」
「キャハハハハ! ヒミコ、いっちばーん!」 

 オレ=ドレッド王がヒミコに、ブリキントンの顔によく似た黄金の勲章を授けようとしたその時   

    ガシャーン!

 ヒミコの姿が消え、鎧はすべて地面に落っこちてしまった。
 オレ=ドレッド王は、信じられないといった様子で声を上げる。 

「こ、これはいったい……っ!?」

 周りを見ると、虎王や先生、海火子も姿が消え始めていた。
 出発の時が来たと悟ったぼくは、オレ=ドレッド王に声をかけた。 

「お別れです。ドレッド王」
「なに? どういうことじゃ!?」 

 先生、虎王、海火子が、それぞれ別れの言葉と共に消えていく。

「それでは、達者でな!」
「勲章はまた今度、頂くぜ!」
「楽しかったぜ、イズー姫……」

 ぼくも姿が消える直前に、みんなに声をかけた。

「いつかまた、どこかで!」

 こうしてぼくたちは、ブリキン城を後にした。
 これで集まった欠片は5つ。龍神丸にまた会えるその時まで、きっとあと少しだ……!
 ぼくは胸を高鳴らせ、次の世界に向けて旅立った。

(つづく)


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著者:小山 眞


次回11月19日更新予定


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