【第51回】魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

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第25話「ふたつのココロと最後のカケラ」Bパート

 間違いない、今のは邪虎丸だ。

「……っ!?」

 不思議とオレ様の心に、新たな魔神の名が浮かび上がってくる。
 邪虎丸はまるで、オレ様に『その名を叫べ』と言っているようだった。

「よし……来い! お前の名は ――」

 オレ様は胸の内に込み上げたその名を、天に向かって叫んだ。

白虎丸びゃっこまる ―――――――――っ!!!」

 オレ様の声に応えるように、猛虎の雄叫びが大空に響き渡る。
 轟く雷鳴と共に、雲間から黒を基調とした魔神がその姿を現した。
 創界山タワーの屋上で倒れていた邪虎丸の体がまばゆい光に包まれ、その魔神の元へと飛んでいく。
 オレ様の目の前で、邪虎丸と黒い魔神の姿が一つに折り重なり、『白虎丸』へと生まれ変わる。
 白虎丸に乗り込んだオレ様は、空中でワタルの乗る龍虎丸と並び立たせた。
 二体の猛々しい虎の魔神は創界山タワーの屋上に向けて飛び立ち、虚閃角の前に着地をする。
 オトヒメはオレ様たちの姿を見て、ガッカリとした声を漏らした。

「あなたもですか、救世主様……しかたありませんね」

 虚閃角を見上げ、ピーンと竪琴の一弦を鋭く弾いた。
 オトヒメの指令を受け取った虚閃角が、その手に携えた巨大な剣を構える。
 さっきはやられたが、今回はまったく負ける気がしない。

「いくよ、虎王!」
「ああ、まかせとけ!」

 ひとつになったオレ様とワタルの想いが、叫びとなって発される。

「「チェーンジ・タイガー!!!」」

 龍虎丸と白虎丸は一瞬で猛虎形態に変形し、虚閃角へと駆けていく。

「虚閃角!」

 オトヒメが竪琴の弦を弾いた高い音が、ピーンと辺りに響き渡る。
 それに応えた虚閃角が額の宝玉に光を集め、オレ様たちに向けて強力なビームを放った。

「避けろ、ワタル!」

 龍虎丸と白虎丸は駆けながら素早く左右に分かれ、ビームを寸前で躱す。

「「たああああああああーっ!!!」」

 オレ様たちは更にスピードを上げ、虚閃角に体当たりを決めた。
 大きく後ろに押しやられた虚閃角に、オトヒメが更に竪琴の一弦を弾く。

「虚閃角、もう一度です!」

 虚閃角の額の宝玉に、再び光が集約していく。
 何度も何度も、同じ技ばかり ――

「いいかげん、見飽きたぜ!」

 オレ様はビームの軌道を予測し、白虎丸を大きく旋回させて、横っ腹を食いちぎろうと虚閃角の側面に向かう。

「待って、虎王! 何か変だよ!」
「なに……!?」

 ワタルの声に応じる間もなく、今までと違って虚閃角のビームが広範囲に拡散された。

「ううっ……!」

 四方八方に飛び交うビームに、瞬く間に白虎丸が熱線に焼かれ、吹き飛ばされる。

「うわあああああーっ!!!」
「虎王!」

 咄嗟に白虎丸の翼を広げ、上空に飛翔させる。
 創界山タワーの屋上に漂う煙が晴れていくと、龍虎丸が虚閃角と激しいつば迫り合いをしているのが見えた。
 龍虎丸が徐々に虚閃角のパワーに押し込まれていく。

「救世主様、あなたもお片付けします!」

 オトヒメの声を受けた虚閃角が、額の宝玉に光を蓄え始める。

「ワタル!」

 オレ様は咄嗟に白虎丸を虚閃角に向けて急降下させた。
 風を、空気を切り裂き、コックピットが激しく揺れる。
 虚閃角の宝玉に向け、猛スピードで突っ込んだ。

「させるかーっ!」

 —— ガキ ――――――――― ン!!!

 急降下の勢いを白虎丸の剣に乗せ、虚閃角の宝玉に突き立てた。
 宝玉にひびが走り、内側から集約されていたエネルギーが散り散りに消えていく。
 宝玉を失い、さすがの虚閃角もゆらゆらとよろめいている。
 あとひと押し、オレ様たちの一撃を叩きこめば!

「いくぞ、ワタル!」
「うん!」

 白虎丸と龍虎丸が、それぞれ手にした強靭な剣と盾を一つにさせる。
 長く鋭い槍型の武器が、その剣先に受けた光をギラリと反射させた。

「「猛虎! 超龍波もうこちょうりゅうはっ!!!」」

 二体の魔神が同時に振り下ろした槍から放たれた光が『龍』と『虎』を象り、虚閃角へ突進していく。
 龍虎ふたつのエネルギー波が、螺旋を描きながらひとつに束なって、虚閃角の胴体に大きな風穴を開けた。

「とどめだ、ワタル!」
「よーし……!」

 龍虎丸が盾に据えられた虎龍剣こりゅうけんを引き抜き、大上段に構えた。

「必殺っ! 虎龍剣 ―――――――っ!!!」

 龍虎丸は虎龍剣を豪快に振り下ろし、虚閃角の体を真っ二つに斬り裂いた。
 虚閃角の体の中央に、真っ白な光の跡が走る。

「そ、そんな……!」

 オトヒメは信じられないと言った様子で、後ずさりをした。
 ピシピシと軋むような音の後、虚閃角は全身から膨大な光が放たれ、大爆発を起こす。
 白煙が晴れてゆく創界山タワーの頂上で、龍虎丸と白虎丸が揃って勝利の咆哮を上げた。

 虚閃角を倒した後、オトヒメは反省を口にして、オレ様たちに頭を下げて来た。
 どうやらアイツらは、みんなをただ『笑顔』にしたかっただけらしい。
 やり方は間違っていたかもしれないが、その想いを理解したオレ様たちは、オトヒメたちを許してやることにした。

 リューグーランドを後にして歩きだす。
 手を振り見送るオトヒメやスタッフたちの姿が遠くなり、やがてにぎやかなアトラクションの光も見えなくなっていった。

「いやぁ~、とても楽しいところでござったな~」
「もう少しごちそうを食いだめしとくんだったぜ!」

 まだ遊び足りなかったのか、シバラクと海火子は余韻に浸ったままの声で言う。
 まったく、呑気なヤツらだ。オレ様たちが大変な思いをしたってのに。
 先頭を歩いていたヒミコが、こちらへ振り返る。

「ねぇねぇ、今度はどこにいくのだ?」

 その問いかけに、ワタルは不思議そうに首をひねった。

「どこって……いつもなら勝手に消えて、次の世界にいけるはずなんだけどなぁ?」

 七魂の剣の柄に並んだ勾玉には六色の光が灯った。
 確かにこれで、すべての龍神丸の欠片を集めたのかもしれない……なのになぜか、オレ様の心は落ち着かなかった。
 イライラするというか、不安というか……とにかくイヤな感じがする。

「虎王」

 考え事をしていたオレ様に、ワタルが声をかける。

「ん、なんだ?」
「本当にごめんね」

 そう言ってワタルはオレ様に、右手を差し出した。

「それと、ありがとう。ぼくを叱ってくれて」
「ワタル……」

 いつもの変わらないワタルの優しい笑みに、オレ様もニッと笑って、その手を握り返す。

「また腑抜けたら、ガツンと言ってやるからな!」
「うん……!」

 オレ様たちが笑顔で手を取り合ったその時 —— 周囲の景色がぐにゃっと歪み始めた。
 形があるものはその輪郭を曖昧にして、明るさと暗さがひとつの色調に塗られていく。
 目に映るすべてのものに焦点が合わないように、世界がどんどんとボヤけていくような感覚に襲われた。

「これ、ヤバいんじゃねえか?」
「みんな! ぼくから離れないで!」

 次の世界に移動するんだろうか……だが、この現象は今までとはまったく違う。

「拙者たち、どうなるんじゃ!?」
「なんなんだよ……!?」

 ゆっくりと歪みが収まっていくと、辺りの景色は一変していた。
 どこを見回しても真っ白で、地平線すら見えない。
ここの空間はまるで、どこまでも広がっているようだ。

「なんか、あるのだ!」

 ヒミコが指さした方向に、ポツンと小さな池がある。
 それを見たワタルが、驚いて目を見開いた。

「あれは……龍神池!?」

 龍神丸のことを思ってか、ワタルの声は期待で少し弾んでいた。
 なにか、とんでもないことが起きなきゃいいんだが……
 逆にオレ様の心は、さっきからザワザワとし続けたままでいた。

(つづく)


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著者:小山 眞


次回1月15日更新予定


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