【第52回】魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

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第26話「いざ、再会の時へ!」Aパート

「ぼく、戦部ワタル。バラバラになった龍神丸を復活させるために、仲間のみんなと一緒に逆さ創界山で旅を続けてるんだ。この前はリューグーランドってところで、ぼくは楽しいことに夢中になって、虎王を傷つけてしまった……だけど、虎王はそんなぼくの目を覚ましてくれたんだ。ぼくたちが『信じあう気持ち』をひとつにした時、この世界にあった龍神丸の欠片から『龍虎丸りゅうこまる』を呼び出すことが出来た。そして虎王の前には白虎丸という魔神が現れ、ぼくたちは力を合わせて、案内人のオトヒメさんが操る魔神・虚閃角きょせんかくを倒したんだ。これで遂に龍神丸の欠片がすべてそろったと思ったら、気が付くとぼくたちは真っ白な空間へ飛ばされてしまっていた。そしてそこには、まるで龍神池みたいな場所が!? ハッキシ言って、今日もおもしろカッコいいぜ!」

 龍神池にそっくりな場所にやって来たぼくたちは、そのほとりに立って辺りの様子を伺った。
 池の中心には小さな島が浮かんでいて、淵からまっすぐ伸びた道が地続きになっている。
 周囲は見渡す限りどこまでも真っ白で、風も、音も、なにひとつない……神秘的な雰囲気さえ漂っている気がする。

「なんなんだろう、ここ……?」

 戸惑うぼくに、海火子とシバラク先生がワクワクと期待に満ちた声で言う。

「ここで龍神丸を呼べばいいんじゃねぇか!?」
「そうじゃ。欠片はすべて集まっておるのだからな!」

 確かにふたりの言うとおり、もしかしてここなら ――

「ぐわ~って、龍神丸が出てくるのだ!」

 ヒミコの純粋な笑顔を見ていたら、なんだかぼくもそんな気がしてきた。

「気をつけろよ、ワタル」

 それでも警戒心を緩めない虎王に、ぼくは笑顔で答えた。

「うん。ありがとう」

 ぼくはひとり、池の中心に浮かぶ小島に向かって歩き出した。
 もうすぐ龍神丸に会えるかもしれないと思うと、ぼくの歩みも自然と早くなる。
 一歩、また一歩と前に進んでいくうちに、ここへ来るまでの思い出が胸に溢れてくる。
 逆さ創界山の色々な世界に行って、たくさんの人たちと出会い、楽しかったことだけじゃなく、大変なこともたくさんあったけど……虎王やヒミコ、先生に海火子、みんながいてくれたから、欠片をぜんぶ集めることが出来た。
 小島についたぼくは足を止め、小さく息をついてから、ゆっくりと七魂の剣を引き抜いた。

「ぼくはここまで来たよ、龍神丸……!」

 剣の柄に並んだ六色の勾玉まがたまは、共鳴するように光り輝いている。
 もうすぐきっと、龍神丸に会える! 湧き上がってこぼれそうになる想いと共に、七魂の剣を頭上に掲げ、叫んだ。

「龍神丸 ―――――――――っ!!!」

 ぼくの叫び声と共に剣の先から猛烈な光が放たれて、空に漂っていた雲を貫いた。
 空いた雲の間からまばゆい光が走り、凄まじい音を立てて水面を打つ。
 池の水面には大きな渦が巻き起こり、波しぶきが上がり始めた。

「これは……!?」

 さっきまで美しく澄んでいた水面が、一瞬で真っ黒に染まっていく。
 なにが起きたのかわからず辺りを見回していると、ぼくの名前を呼ぶ声が聞こえた。

「ワタル……ワタルよ……」

 それはずっと聞きたかった、あの声だった。
 目の前に広がる真っ黒に染まった水面から、黒色の龍神丸が浮かび上がって来る。
 全身から『闇』のようなオーラを立ち昇らせるその姿に、違和感を覚える。

「本当に……龍神丸なの?」

 不安になってその顔をのぞき込むと、龍神丸はしっかりと頷いた。

「ありがとう、ワタル。ようやく復活することが出来た」
「龍神丸……っ!」

 よかった……ぼくの目の前でバラバラになって飛んで行ったあの時、もう二度と会えないんじゃないかと思った。
 でも今、間違いなく、ぼくの目の前には……龍神丸がいる!
 喜びをかみしめながら、ゆっくりと龍神丸に近づいてくと ――

「うおおおおおおおおお ―――― っ!!!」

 龍神丸の全身から真っ黒な霧が放たれ、辺りに猛烈な風が吹きすさぶ。
 風にあおられたぼくは宙に浮きそうになるのをこらえ、その場で身構えた。

「な、なんなの……!?」

 池のほとりを見ると、ヒミコと虎王も、飛ばされないように踏ん張っている。

「あ~りゃま~っ!」
「こいつはっ!?」

 荒れ狂う風の中、海火子とシバラク先生が必死に耐えながら、声を荒げた。

「おい、ただ事じゃねぇぞ……!」
「本当にあれは、龍神丸なのでござるか!?」

 龍神丸から放たれた真っ黒な霧が、風を受け、地面を舐めるように広がっていく。黒い霧に触れた白い大地は、あっという間にまがまがしく赤黒い荒れ地になってしまった。
 それは闇がすべてを塗りつぶしていくような、恐ろしい光景だった。

「龍神丸……どうしちゃったの!?」
「ハッハッハッハ……ウハハハハハッ!!!」

 龍神丸の両目に、不気味な赤い光が灯る。
 さっきの違和感が、ぼくの中でどんどん大きくなっていく。

「さすがは、ワタル。お前のおかげで、こうして以前よりも強大な力を得ることが出来た」
「強大な……力?」

 全身から真っ黒な霧を立ち昇らせた龍神丸が、両拳を握りしめた。

「湧き上がる力に、心が躍る……! さぁ、ワタルよ。いつものように、暴れよう!」
「暴れ……る……?」

 戸惑うぼくを誘うように、龍神丸が手を差し出してきた。
 黒い霧はゆっくりと、静かに、ぼくの足元まで漂って来る。

「来るのだ、ワタル!」

 龍神丸がぼくを中に吸い込もうと、額を光らせる。

「待ってよ、龍神丸……!」

 ぼくの身体が否応なしに、ふわりと浮かび上がった。
 強引に龍神丸の中に吸い込まれるぼくの目に、駆け寄る虎王の姿が映った。
 虎王はぼくに向かって必死に手を伸ばし、叫んだ。

「ワタル ―――――――――――!!!」

 龍神丸へと引きよせられ、その声も遠くに消えてしまう。
 ぼくは薄暗い空間を落ちていくうちに、真下に浮かぶ金龍を見つけた。
 ただ、そこにはあの黒い霧がもうもうと漂っている。

「龍神丸! どうしちゃったの!?」

 金龍の上に降りたぼくの声は、黒い霧の中にただ溶けていくだけだ。

「ねぇ、龍神丸!!!」

 龍神丸からの応えが返ってくる代わりに、周囲に漂う黒い霧がいきなり二本の龍の手になってぼくの両腕を掴んだ。

(つづく)


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著者:小山 眞


次回1月21日更新予定


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